みなさん、こんにちは。Bridge for Children, KGU3年の大西貴大です。今回は、「インドネシアにおける日本語教育」について私自身の経験も踏まえながら書かせて頂きます。(2017年4月〜8月末までインドネシアの高校で日本語教師を経験。詳しくは、以下のリンクから。https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=1104343793030605&id=305080959623563)
みなさんが普段話している日本語。世界でどれだけの人が学んでいるかを知っていますか?国際交流基金の2015年の調査によると、137の国と地域で約370万人が日本語を学んでいるとされています。そのうち、約30%の人がASEANで日本語を学んでいます。日常的に日本語が使われる国は日本だけですが、世界ではたくさんの人が「日本語を話せるようになりたい!」と熱心に勉強しており、その数には本当に驚かされますね!国別での日本語学習者数を見た時、世界第2位にランクインするのがインドネシア!その数はなんと745,125人です。インドネシアでこれほどまでに日本語が学ばれているのはどうしてでしょうか??
まず、大きな理由として挙げられるのが、「インドネシアが親日国家であるから」です。親日国家であることと日本語学習にはどういう関係があるのでしょうか?それは歴史的な背景にありました。インドネシアで日本語教育が始まったのは、日本軍がインドネシアを植民地支配している時からで、強制的に行われました。”強制的”という言葉を聞くと、マイナスのイメージがありますよね?しかしながら、当時のインドネシア人はこのことを前向きに捉えていました。なぜでしょう?それは、インドネシア人がオランダからの支配に対し嫌悪感を抱いていたことと、インドネシアがオランダに植民地支配されていた当時の予言者が「必ず救世主が現れる」と話していて、その言葉が日本兵と重なったからです。そのため、日本語学習に関して強制はされていたものの、当時のインドネシア人はポジティブに捉えており、植民地の時代が終わった後も今日まで親日感情が薄まることなく、インドネシアでは積極的に日本語教育がされているのです。
また、近年では、日本の文化、特にアニメや漫画、J−POPなどのサブカルチャーが若者を中心に人気を集めており、それによって日本語そのものに興味を持ったという人も多くいます。インドネシアでは、1962年から日本のアニメが放送され、1990年から日本の漫画が発売されるようになりました。2011年には、AKB48の姉妹グループであるJKT48がインドネシアの首都であるジャカルタで活動を始めています。
その他にも、2006年からは国家教育カリキュラム(日本の教育指導要領に当たる)の改正により、後期中等教育機関(主に高校)で日本語を含むいくつかの外国語を第2外国語として選択必修することが決定され(その後、2013年のカリキュラム改定により第2外国語は非必修化)、多くの高校生がその授業を通して3年間継続して学べるようになったり、日系企業のインドネシア進出やEPA(経済連携協定)における、外国人看護師の日本受け入れなど、日本語を使った就職先の増加なども挙げられます。
日本語教育が盛んな一方で、インドネシアにおける日本語教育にはまだまだたくさんの課題が残されています。まず、「日本語教員の慢性的な不足」です。特に高校ではその傾向が顕著で、一人の先生が100人以上の生徒を抱えていたり、2校掛持ちで日本語を教えている先生がいるのが現状です。また、インドネシア人の日本語教員のJLPT(日本語能力試験)取得平均はN4~N3と言われています。このレベルは、基本的な日本語あるいは、日常的な場面で使われている日本語をそれなりに理解できる程度とされています。日本に一度も来たことがない日本語教員が多くを占めているようです。
また、私自身の経験からインドネシアの日本語教育の課題として、「インドネシアで販売されている日本語の教科書には書き方や表現の誤った記述が散見される」ことです。私が実際にインドネシアの高校で教えていた際、現地で使用されている教科書を使う機会が何度もありましたが、多くの間違いがあることに気付きました。時には、現地の日本語の先生から「日本語の教科書で誤っている箇所を指摘してほしい。」と言われることもありました。全ての教科書が間違いだらけということはありませんが、間違った日本語表現を使用している教科書が多くあることは事実です。
最後になりますが、私が日本語を教えていた際に感じていたのは、「インドネシアにおける日本語の人気は徐々に落ちてきている」ということです。実際、2015年の国際交流基金の調査によると、2012年には872,411人のインドネシア人が日本語を学習していたのに対して、2015年では、745,125人と約15%も減少しています。世界的に見ても、2012年には3,985,669人が日本語を学習していたのに対して、2015年では3,655,024人と30万人以上減少しています。インドネシアにおける日本語学習者が減少している要因として1つ考えられるのが「日本語以外の言語に人気が移行しているのではないか」ということです。インドネシアで5ヶ月生活した中で、日本語よりも韓国語やタイ語を日常的に使用している友達が非常に多かったです。FacebookやInstagramにも韓国語やタイ語を使って文章を書いているインドネシア人の友達もたくさんいました。このままいくと、今後も日本語学習者数は減少することが予想されます。たった5ヶ月間インドネシアで日本語を教えただけではありますが、日本語学習者数が減少していくのはとても悲しいです。日本語学習者数減少という流れを食い止めるために何らかの対策を施す必要性があるのではないでしょうか?
長文になりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
P.S. インドネシアでは、五輪真弓さんが歌われている『心の友』がとても人気で、インドネシアの第二の国歌と言われているほど愛されている曲です。30年前にインドネシアのラジオで流されたことがきっかけでした。
https://youtu.be/xU3jbdk9ZM4
【参考資料】
国際交流基金(2017)海外日本語教育機関調査
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey_2015/all.pdf (2018/1/8アクセス)
八田直美(2017) インドネシアの日本語教育
http://www.nkg.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/06/20170615_indonesia.pdf