皆さんは「ゴミ山」と呼ばれる場所を知っていますか?
テレビや新聞、大学の授業などでその名を耳にしたことがある方は多いかもしれません。中には、え、そんなもの昔の話でしょ?と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。本日は、その「ゴミ山」について、体験談も含め、お話ししたいと思います。
ゴミ山とは、焼却されないゴミが大量に捨てられ、山積みになっているゴミ捨て場のことです。ここに住む人々は、プラスチックやペットボトルなどのゴミを拾い、それを売ることで生計を立てています。なぜゴミがそのまま捨てられているのか?フィリピンなどの東南アジア諸国では、有害物質の発生を防ぐために、政府によってゴミの焼却が禁止されているからです。本来、高温焼却炉で焼却処理をすれば有害物質は発生しませんが、これは一般の焼却炉に比べ、建設費・維持費が高くつきます。フィリピンは、これらの経済力を持ち合わせていない上に、建設する技術力もありません。そのため、ゴミは「埋め立て処理」をされていますが、実際は、分別されずに捨てられたゴミがゴミ処理場に山積してゴミ山になってしまっています。2000年のゴミ山の崩落事故により一度は閉鎖されたゴミ処理場も、溜まった莫大な量のゴミを処理するために今では再開されており、現在ゴミ山で生活をしている人もたくさんいます。
昨年、私を含め数人のBFCメンバーは、ゼミのフィールドワークでゴミ山を訪れました。場所は、フィリピンのトンド地区です。ここは、「東南アジア最大級のスラム」という風に呼ばれるほど大きなスラム街です。首都マニラの中心部から車でたった50分、その場所にゴミ山はあります。高層ビルやマンション、ショッピングモールが立ち並ぶ町並みが、みるみるうちにゴミだらけで舗装されていない道路、今にも崩れそうな家、ボロボロの服や裸で生活する人々に変わってゆきます。さらには、年々ゴミが増えており、今年は子どもたちと触れ合えるスペースも少ししかありませんでした。
子どもたちの様子から、毎日を生きるということがいかに厳しいものであるかを痛感させられました。目をキラキラさせて笑顔で走り回っていた子どもたちが、食事の時間になると目の色を変えて1日1回だけの食事に手を伸ばす光景が、あまりに衝撃的で忘れることができません。さらに食べているものは私たちが想像するご飯ではなく、少量のスープか飴やチョコレートなどのお菓子だけでした。また、お金がなく、学費などはもちろん、服や靴などの身につけるものさえもない子どもたちもいました。ゴミ山の道路は舗装されておらず、ゴミも散乱しているため、いつ足を怪我して感染症を引き起こすか分かりません。非常に体が細くお腹だけがぽっこり出るほど栄養不足で免疫力のない彼らは、足元の怪我たった1つで死に至ってしまうこともあるのです。食事の問題、衣服の問題などから、常に死と隣り合わせで生活をしている子どもたちと初めて直面した私は、とても一言では言い表せませんが「ショック」を感じました。私はこの子くらいの年齢のときは、学校に通って勉強をしていたし、習い事だっていくつかしていた、それなのに…と。しかし、私の想像と違っていたことが1つありました。それは、彼らが私たちに向けてくれた笑顔です。
私たちがゴミ山で出会った子どもたちは、日本の幼稚園児や小学生と何ら変わりのない、元気で好奇心旺盛で無邪気な子どもたちでした。その素敵なキラキラした笑顔を守りたいという思いで、私は今Bridge for Children, KGUの活動を行っています。もちろん私たちが政策レベルでフィリピンの現状を変えることはできません。しかし、BFCの活動によって、日本国内でこの現状をより多くの方々に知ってもらい、興味をもってもらえたら、そしてアクションを起こす人が増えたらとても嬉しく思います。このコラムを読んで、今一度自分に何かできることはないか?と考えていただければ幸いです。ぜひ踏み出してみてください。