Bridge for Children, KGUに所属している大西貴大です。
第5回のコラムは「日本とフィリピンの貧困の違い」について書かせて頂きます。
今回のテーマを見て、「貧困は発展途上国だけの問題ではないのか?」と思った方も多いのではないでしょうか?実際のところ、「貧困」は発展途上国だけでなく、先進国でも大きな問題となっています。しかしながら、先進国と発展途上国の「貧困」はひとくくりにすることはできません。なぜなら、タイプが違うからです。
今回のテーマを話す上で欠かすことのできないキーワードが2つあります。それは、「絶対的貧困」と「相対的貧困」です。
まず、それぞれの定義を確認しましょう。
「絶対的貧困」とは、生命を維持するために最低限必要な衣食住が満ち足りていない状態のことを指します。(世界銀行より参照)例えば、途上国において飢餓で苦しんでいる子どもや、都市の路上で生活しているストリートチルドレン等はこれにあたるといえます。
一方、「相対的貧困」とは、その地域や社会において「普通」とされる生活を享受することができない状態のことを指します。(OECDより参照)この場合、「貧困」であるか否かは、その人が生きている社会の「普通の生活」との比較によって相対的に判断されます。「貧困」の基準が、その人が生きている国、地域、時代等によって、変化することが「絶対的貧困」との一番の違いです。
では、本題に戻りましょう。日本とフィリピンはどちらにあたるでしょうか?
まず、フィリピンは「絶対的貧困」の国とされています。原因の1つとして考えられるのは、歴史的に形成されたというものです。フィリピンは、16 世紀から 20 世紀半ばまで、スペインと米国の植民地となり、第二次大戦中は日本軍 に占領されました。植民地支配の下、民衆たちは奴隷労働にも等しい重労働に従事させられ、貧しい生活を余儀なくされました。このように、先進国が過去に植民地として支配した世界的資本主義システムが結果としてフィリピンのように貧困国を生み出してしまいました。また、貧困が貧困を拡大させている原因の1つに、子どもたちが教育の機会を失っているということが挙げられます。そうした子どもたちが大人になったとしても、まともに職に就くことは難しく、貧困層はいつまでたっても貧困のままであるという「負のサイクル」が起きてしまっています。
一方、日本は「相対的貧困」の立場です。OECDの調査によると、日本はアメリカに次いで4番目に相対的貧困率の高い国であるということが分かりました。特に、「子どもの貧困」は顕著で、厚生労働省の調査によると、1990年代半ば頃からおおむね上昇傾向にあり、2009年には15.7%と約6人に1人の子どもが貧困状態であるとされています。要因として、長引くデフレ経済下で子育て世帯の所得が減少したことや、母子世帯が増加する中で働く母親の多くが給与水準の低い非正規雇用であることなどが挙げられています。
ここで皆さんに勘違いして欲しくないことがあります。それは、『「相対的貧困」は「絶対的貧困」よりも軽いというのは間違いである』ということです。皆さん、よく考えてみて下さい。「周りのみんなにとっては当たり前の生活が自分だけ享受できない」という状態を。「なんで、僕だけ?私だけ?」というこの状態は子どもたちに大きな傷を残します。そして、子どもたちは次第に自信を失っていくのです。つまり、『「相対的貧困」は、「絶対的貧困」と同レベルのダメージを人に与える』ということです。
みなさんはこのような状況を知り、どのように感じましたか?
今回は「日本とフィリピンの貧困の違い」について書かせて頂きましたが、世界には他にも様々な問題が存在します。私たちBridge for Childrenは、子どもたちが少しでも幸せを感じられるように、少しでも笑顔が増えるように、これからも活動を頑張っていきます。最後までお読み頂きありがとうございました。これからもBridge for Childrenをよろしくお願いいたします。